安藤哲也
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 今回のゲストは、父親であることを楽しむ生き方を提唱しているNPO法人ファザーリング・ジャパンの代表理事を務める安藤哲也さん。パパによる絵本の読み聞かせやパパ検定など、パパに育児の楽しさを伝える数々のおもしろい企画を手掛けている安藤さんにパパに育児参加を促すコツについて伺いました。
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見出し1   パパにも育児参加して欲しいというママたちからの声をよく耳にします。事実、先日開催した「パパ検定」のイベントでも、参加に積極的なのは実はママの方でした。パパ力を身につけてほしいと情報収集して、当日、パパと子どもを連れて家族で参加しているケースが大半を占めていました。  
  若い層を中心に育児に参加したいと考える男性は増えています。しかし、男性の意識が少しずつ変化している一方で、実はママの対応がパパの育児参加を阻んでいるということもあるんです。つまり、ママが知らず知らずのうちにパパが育児参加しにくい環境を作ってしまっているんですね。それを「門番としての母親」マザー・アズ・ゲートキーパーとよんでいます。

見出し2   陥りやすいケースとしては、パパが自発的に動く前に一々指示してしまうケースですね。”どうしてやってくれないの?“と、疑問形でのもの言いが増えていたら要注意です。ママが家庭におけるパパの上司状態になっている可能性大。せっかく参加しようと思っても、事細かに指示され、逐一文句を言われていたら、やる気も萎えてしまいますよね。
  また、これも良くあることなのですが”どこどこのパパはこれをしてくれるのに……“と、無意識に比較したりしていませんか? 私の活動を見て”安藤さんはこんなこともしているし、こんなこともできるのに“と、つい批判めいたことを口にしていることって意外と多いものです。我が家の場合、共働きで収入も育児も一緒にというスタンスだったこともあり、もう10年以上、育児に携わっていますから、新米パパに比べたら上手にできることも育児の楽しさも実感しています。でも、これから参加しようというパパにいきなりそれを求めるのは酷な話です。人それぞれ得意・不得意がありますし……。
  できないことを指摘するのではなく、感謝の気持ちを持ってあえてできたところを褒める。最初は大変かもしれませんが、そう視点を変えて接するよう意識するだけで、次第にパパも喜んで育児をするようになると思いますよ。
  どんなに頑張っても、育児においてはママには敵わないのが父親というもの。お父さんの育児参加度合いを円グラフ的に%で考えたり、結果を重視しすぎるのは、夫婦間のパートナーシップを崩す原因にもなりかねません。女性であれ、男性であれ、子育てとは楽しく、自分自身も育ててくれるかけがえのない経験です。互いに協力することで一緒に子育てを楽しんでほしいと思います。

見出し3   私がファザーリング・ジャパンを立ち上げる最終的なトリガーになったのは、奈良でおきた少年による放火事件。父親によるスパルタ教育から逃げたいと、自宅に火を放ち、義母と兄弟を焼死させてしまったあの事件のニュースを見たとき、父親による最悪な子育ての顛末を見たような気がしました。当時は楽天に勤めていたこともあって、六本木ヒルズに深夜煌々と灯るオフィスの明かりを見ながら、いったいどれだけの父親があの事件の少年の父親同様、家のローンや子どもを有名校に進学させるために疲弊しているんだろう? そう思ったら、いてもたってもいられなくなって、その晩にNPO法人の事業計画書を一気に書き上げたのを覚えています。
  実は、あのニュースの前から、疑問に思ってはいたんです。NPO法人を立ち上げる前から絵本好きのパパ友だちと一緒にボランティアで「絵本ライブ」を開催しているのですが、そのイベントに来ている親子連れの中に必ずと言っていいほど、笑わない子がひとり、二人いるんです。私たちの読み聞かせは、あくまで子どもたちを楽しませるためのもの。いかに子どもたちと絵本を通じてコミュニケーションできるか、という視点で絵本をセレクトしていますから、『うんちっち』『はなくそ』というタイトルの下品で「しつけ」の何の役にも立たないようなものを好んで読みます。子どもたちは実際、この手の絵本が大好きで会場はいつも大爆笑。読んでいる私たちも心の中でガッツポーズ状態なのですが、そうなると、ひとりふたりいる笑わない子どもが気になってくるんです。ここで笑っていいの?と言わんばかりに親の顔色をうかがう子ども。そしてさらに観察すると、そういう子のお母さん・お父さんもまた笑わない人のケースが多いのです。笑顔を忘れてしまった家庭で子どもが育つことがいいわけがありません。そんな思いもあって、子どもたちが暮らしやすい環境のために、父親をまず笑顔にする。そして父親たちがエンジンとなって社会を変えていこう!という思いを込めてファザーリング・ジャパンを立ち上げました。
  どんなに頑張っても、育児においてはママには敵わないのが父親というもの。お父さんの育児参加度合いを円グラフ的に%で考えたり、結果を重視しすぎるのは、夫婦間のパートナーシップを崩す原因にもなりかねません。女性であれ、男性であれ、子育てとは楽しく、自分自身も育ててくれるかけがえのない経験です。互いに協力することで一緒に子育てを楽しんでほしいと思います。

見出し4   親の仕事は、一日でも早く子どもを自立させることだ、と私は思っています。有名校に入れることでも、贅沢な暮らしをさせることでもありません。子どもたちが少しでも早く、自分の力で生きていけるよう促すのが親の役目ではないでしょうか。特に父親は子を突き放す一方で、子どもたちがいざとなったら帰って休める家や地域を用意しておくことも不可欠です。傷ついた子どもたちが「帰りたい」と思える家や街がなくてはなりません。これは父親になって気づいたことですが、子どもと一緒に散歩をしていると視野が広がります。「どうしてこの信号はこんなに早くに変わってしまうのだろう?」「ここにガードレールがないのは危険だな」と、今まで見えていなかった街のさまざまな問題点に気づくのです。私はそういうことを看過できない性格なのですぐ役所に改善を求めて掛け合ったりしてしまうのですが、父親だからできる育児として、まさにこうした「社会との関わり」が実は重要です。父親たちがエンジンとなって家庭だけでなく、地域や社会を良くしていくこと。それによって希薄になった「シチズンシップ(市民感覚)」を獲得し、お父さん自身も自立し、かっこいい大人になっていく、ということです。
  子どもたちを健やかに育てていくには、親自身の自立はもちろん、地域社会とのつながりを切り離すことはできません。少しでも多くのお父さんが育児に対する意識を改め、実践し、地域との連携で社会変革ができたらいいと願っています。